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東京地方裁判所 平成8年(ワ)4002号 判決 1999年5月31日

東京都中央区八丁堀四丁目二番七号

原告

ストークス株式会社

右代表者代表取締役

森本宏

右訴訟代理人弁護士

山内容

東京都中央区八丁堀二丁目二九番五号

被告

東洋サイエンス株式会社

右代表者代表取締役

齋藤秀夫

東京都品川区北品川四丁目一番七号

被告

齋藤秀夫

埼玉県春日部市谷原一丁目一八番地一ドルミ春日部一二一号

被告

北川智士

東京都江戸川区西葛西四丁目六番一八-六二五号

被告

古川喜一

右被告ら四名訴訟代理人弁護士

宮坂浩

山内一浩

東京都千代田区隼町三番六号

被告

株式会社池村

右代表者清算人

池村光介

埼玉県越谷市大字大泊六一一番地六八

被告

佐々木兼道

右被告ら二名訴訟代理人弁護士

山地義之

渡邉正昭

菅芳郎

右被告ら二名訴訟復代理人弁護士

杉本一志

東京都文京区小石川四丁目六番一〇号

被告

エーザイ株式会社

右代表者代表取締役

内藤晴夫

千葉県浦安市明海七-七-六〇一

被告

田谷正明

東京都文京区本郷四-三〇-一三

被告

奥野泰雄

右被告ら三名訴訟代理人弁護士

田中克郎

千葉尚路

中村勝彦

長坂省

五十嵐敦

荻原雄二

岡田英之

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

一  被告東洋サイエンス株式会社、同齋藤秀夫、同北川智士及び同古川喜一は、原告の取引先に対し、原告が営業活動を閉鎖する旨の事実を記載した文書を配布し、又は右事実を告知してはならない。

二  被告東洋サイエンス株式会社、同齋藤秀夫、同北川智士及び同古川喜一は、既に配布した前項の文書のうちの右事実部分を回収し、別紙目録(一)及び(二)記載の文案のとおり訂正通知をせよ。

三  被告東洋サイエンス株式会社、同齋藤秀夫、同北川智士及び同古川喜一は、日本経済新聞、化学工業日報及び薬事日報の各全国版に各一回ずつ別紙目録(三)記載の文案により、標題、当事者双方名及び被告代表取締役名は四号活字、その他の部分は五号活字を使用した広告を掲載せよ。

四  被告東洋サイエンス株式会社、同齋藤秀夫、同北川智士、同古川喜一、同株式会社池村、同佐々木兼道、同田谷正明及び同奥野泰雄は、原告に対し、各自、金五二一五万二二七一円及びこれに対する平成八年四月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  被告エーザイ株式会社は、原告に対し、金一二六六万五〇五四円及びこれに対する平成八年四月一三日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

第二  当事者の主張

一  被告東洋サイエンス株式会社(以下「被告東洋サイエンス」という。)、同齋藤秀夫(以下「被告齋藤」という。)、同北川智士(以下「被告北川」という。)及び同古川喜一(以下「被告古川」という。)に対する請求

1  請求原因

(一)(1) 被告齋藤、同北川及び同古川(以下、これらの被告三名を合わせて「被告齋藤ら三名」という。)は、平成七年四月下旬から同年九月一〇日までの間に、別紙目録(四)記載の原告のコンピューターの磁気記憶媒体上の営業情報並びに別紙目録(五)及び(六)記載の営業情報(以下、これらを合わせて「本件営業情報」という。)を窃取した。

(2) 本件営業情報は、原告の事業活動に有用であり、かつ、公然と知られていない情報である。特に、バイヤーリスト、メーカーリスト等の取引先に関する情報並びに商品関連情報、契約台帳、契約実績明細表(月報)、商品リスト、FAX発受信控、手紙発受信控、メーカーの商品規格書及び商品説明書、価格表、乙仲見積書、輸出船積関係書類等の貿易取引に関する情報は、化学品の輸出業務を行う商社である原告にとっては外部に知られてはならない会社存立の基礎となる情報である。

また、原告の従業員であった被告齋藤ら三名は、職業倫理として、本件営業情報の有用性及び要秘密性を十分認識しており、原告は、被告齋藤ら三名に対し、本件営業情報を業務以外に使用することを認めておらず、その外部への漏洩を厳に禁じていた。さらに、原告は、ビルのワンフロア全てを占有し、出入口は一か所のみで、第三者の原告への出入りは、出入口の扉の開閉により全てチェックしており、社員以外の者が本件営業情報にアクセスできないようにしていた。これらのことから、原告は、本件営業情報を秘密として管理していたといえる。

したがって、本件営業情報は、不正競争防止法二条四項の営業秘密に当たる。

(二) 被告齋藤ら三名は、平成七年九月一三日、本件営業情報を使用して、原告の海外取引先に対し、被告株式会社池村(以下「被告池村」という。)から別紙目録(七)記載の文面の文書をファックスで送信した。

(三) 被告齋藤ら三名は、平成七年九月初めころから、本件営業情報を使用して、原告の国内取引先(メーカー)、海外取引先(バイヤー)及び銀行等に対し、「原告は店を閉める予定である。原告はもはや機能していない。原告はきびしい資金状態にある。」などといった電話をかけ又はこの趣旨を記載した書面をファックスで送信し、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知・流布し、原告の国内及び海外の右取引先が原告との取引を停止し、被告齋藤ら三名及び同人らが設立する新会社と取引をするように働きかけた(以下「原告は店を閉める予定である。原告はもはや機能していない。原告はきびしい資金状態にある。」との趣旨の事実を「本件虚偽事実」という。)。

被告齋藤ら三名は、平成七年九月一一日から同月二六日ころまでの間は、被告池村において右の行為を行った。

被告齋藤ら三名は、平成七年一〇月四日、被告東洋サイエンスを設立し、被告齋藤及び被告北川は、代表取締役に、被告古川は、取締役に就任した。

(四) 原告は、昭和六三年一一月、協和化学工業株式会社(以下「協和化学」という。)との間で、いわゆる特約店契約の性質を有する販売代理店(以下「特約販売店」という。)契約を締結し、同年一一月二九日以降、同社の医薬品原料等につき、同社の特約販売店として海外のバイヤーであるインドネシアのカルベファルマ社、ウィスモフソド社、キミアファルマ社、ハリムサクティ社、ビンタントゥジュ社との間で国際売買契約の締結及び輸出業務を行う継続的取引を行ってきた。

被告齋藤ら三名は、平成七年九月五日ころ、協和化学に対して本件虚偽事実を告知し、また、同月一二日、フロイント産業株式会社(以下「フロイント産業」という。)の従業員である佐々木俊也をして、右カルベファルマ社に対し、フロイント産業名で別紙目録(八)記載の文面のファックスを送信させて本件虚偽事実を告知した。

カルベファルマ社は、インドネシアで最大の製薬会社であり、ビンタントゥジュ社及びエンセバル社は、カルベファルマ社の子会社であって、カルベファルマ社に本件虚偽事実を告知すれば、その子会社であるビンタントゥジュ社及びエンセバル社にもそれが流布され、また、カルベファルマ社に商品を納入している現地の輸入業者、製薬工場を経営しているキミアファルマ社等原告が現地において取引をしているほとんどの取引先に本件虚偽事実が当然流布されることになる。

被告斉藤ら三名の右行為により、原告は、被告東洋サイエンスに協和化学の特約販売店としての地位を奪われ、協和化学の特約販売店として行っていたカルベファルマ社、ウィスモフソド社、キミアファルマ社、ハリムサクティ社、ビンタントゥジュ社との取引を失い、得べかりし利益として少なくとも金二九三四万四一〇七円の損害を被った。

(五) 原告は、「昭和六三年一二月二八日以降、キンセイマテック株式会社(以下「キンセイマテック」という。)の商品「セリサイト」等につき、同社の特約販売店としてインドネシア及びタイの企業との間で国際売買契約の締結及び輸出業務を行う継続的取引を行ってきた。

被告齋藤ら三名は、平成七年九月一二日、キンセイマテックに対し、本件虚偽事実を告知した。そのため、原告は、被告東洋サイエンスにキンセイマテックの特約販売店としての地位を奪われ、同社の特約販売店として行っていたエトセンド社及びマス社との取引を失い、得べかりし利益として少なくとも金一四四万六五二六円の損害を被った。

(六) 原告は、平成二年八月二九日以降、東海カーボン株式会社(以下「東海カーボン」という。)の商品「TOKA BLACK」等につき、同社の一手販売代理店として同社とマクルーム社との間の国際売買契約の仲介・締結及び輸出業務を行う継続的取引を行ってきた。

被告齋藤ら三名は、平成七年九月一二日ころ、東海カーボン及びマクルーム社に対し、本件虚偽事実を告知した。そのため、原告は、同年一一月以降、東海カーボンから右継続的取引を一方的に停止され、被告東洋サイエンスに東海カーボンの一手販売代理店としての地位を奪われ、同社の一手販売代理店として行っていたマクルーム社との取引を失い、得べかりし利益として少なくとも金五九万八七八五円の損害を被った。

(七) 原告は、平成元年八月二九日以降、明治製菓ファーマインターナショナル株式会社(以下「明治製菓ファーマ」という。)の商品コリスチン、ゲンタマイシン等につき、同社の一手販売代理店として同社とインドネシア及びタイの企業との間の国際売買契約の仲介・締結及び輸出業務を行う継続的取引を行ってきた。

被告齋藤ら三名は、平成七年九月一一日、明治製菓ファーマに対し、本件虚偽事実を告知した。そのため、原告は、同年一〇月以降、明治製菓ファーマから右継続的取引を一方的に停止され、被告東洋サイエンスに明治製菓ファーマの一手販売代理店としての地位を奪われ、同社の一手販売代理店として行っていたインドネシア及びタイの企業との取引を失い、得べかりし利益として少なくとも金五四万一六一八円の損害を被った。

(八) 原告は、平成元年六月以降、日本精化株式会社(以下「日本精化」という。)の商品である飼料添加物用コレステロールにつき、同社の一手販売代理店として同社とバマ社、デワトパン社、コムフィード社外三社との間の国際売買契約の仲介・締結及び輸出業務を行う継続的取引を行ってきた。

被告齋藤ら三名は、平成七年九月一四日ころ、日本精化に対し、本件虚偽事実を告知した。そのため、原告は、被告東洋サイエンスに日本精化の一手販売代理店としての地位を奪われ、同社の一手販売代理店として行っていたバマ社、デワトパン社、コムフイード社等との取引を失い、得べかりし利益として少なくとも金一三五万九一三一円の損害を被った。

(九) 原告は、金剛化学株式会社(以下「金剛化学」という。)及び協和醗酵株式会社(以下「協和醗酵」という。)の製品につき、右各社の一手販売代理店として右各社とナムシャン社との間の国際売買契約の仲介・締結及び輸出業務を行う継続的取引を行ってきた。

被告齋藤ら三名は、平成七年九月一三日ころ、ナムシャン社に対し、本件虚偽事実を告知した。そのため、原告は、被告東洋サイエンスに金剛化学及び協和醗酵の一手販売代理店としての地位を奪われ、同社の一手販売代理店として行っていたナムシャン社との取引を失い、得べかりし利益として少なくとも金二一万二八七六円の損害を被った。

(一〇) 原告は、横尾化学産業株式会社(以下「横尾化学」という。)及び保土谷化学工業株式会社(以下「保土谷化学」という。)の製品につき、右各社の一手販売代理店として右各社とラッキーレジェキ社との間の国際売買契約の仲介・締結及び輸出業務を行う継続的取引を行ってきた。

被告齋藤ら三名は、平成七年九月一一日ころ、保土谷化学に対し、本件虚偽事実を告知し、同月二〇日前、横尾化学に対し、本件虚偽事実を告知した。そのため、原告は、被告東洋サイエンスに横尾化学及び保土谷化学の一手販売代理店としての地位を奪われ、同社の一手販売代理店として行っていたラッキーレジェキ社との取引を失い、得べかりし利益として少なくとも金二九万二七三九円の損害を被った。

(一一) 原告は、被告エーザイ株式会社(以下「被告エーザイ」という。)の商品ビタミンE50については平成元年以降、商品ビタミンE50を除くビタミンE類については平成三年以降、同被告の一手販売代理店として同被告とインドネシア及びタイの企業との間の国際売買契約の仲介・締結及び輸出業務を行う継続的取引を行ってきた。

被告齋藤ら三名は、平成七年九月六日、七日及び八日、被告エーザイに対し、本件虚偽事実を告知した。そのため、原告は、同月一三日、後記4(四)ないし(八)の一手販売代理店契約を、同月一八日、同(一)ないし(三)の一手販売代理店契約を一方的に解約され、得べかりし利益として少なくとも金一二六六万五〇五四円の損害を被った。

(一二) 原告は、平成元年九月以降、東ソー株式会社(以下「東ソー」という。)の商品である合成甘味料につき、同社の一手販売代理店として同社とインドネシアのヌトリ社外三社、タイのブシコム社外二社及びインドのラコス社との間の国際売買契約の仲介・締結及び輸出業務を行う継続的取引を行い、平成四年五月以降、東ソーの商品である染色助剤用アミン類につき、同社の一手販売代理店として同社とラッキーレジェキ社との間の国際売買契約の仲介・締結及び輸出業務を行う継続的取引を行ってきた。

被告齋藤ら三名は、平成七年一一月一三日前、東ソーに対し、本件虚偽事実を告知した。そのため、原告は、被告東洋サイエンスに東ソーの一手販売代理店としての地位を奪われ、同社の一手販売代理店として行っていた前記各社との取引を失い、得べかりし利益として少なくとも金九三万三九二二円の損害を被った。

(一三) 原告は、日本化薬株式会社(以下「日本化薬」という。)の商品である制ガン剤につき、同社の一手販売代理店として、平成三年五月以降、同社とタイのバイオファーム社との間で、同年一〇月以降、同社とインドネシアのカルベファルマ社との間で、それぞれ国際売買契約の仲介・締結及び輸出業務を行う継続的取引を行ってきた。

被告齋藤ら三名は、平成七年九月一四日ころ、日本化薬に対し、本件虚偽事実を告知した。そのため、原告は、同社から同社のカルベファルマ社及びバイオファーム社向けの取引を一方的に停止され、得べかりし利益として少なくとも金一三六万二〇八九円の損害を被った。

(一四) 原告は、株式会社日本触媒(以下「日本触媒」という。)の商品である食品添加物調味料(SS50)につき、同社の一手販売代理店として同社とCSC社との間の国際売買契約の仲介・締結及び輸出業務を行う継続的取引を行ってきた。

被告齋藤は、平成七年一二月ころ、CSC社のMS, MONTITAに電話をかけ、日本触媒のSS50は、被告東洋サイエンスが輸出することになったので、今後は被告東洋サイエンスに引き合いをするように言い、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知・流布して、同人をして日本触媒の一手販売代理店が原告から被告東洋サイエンスに変わったと信じ込ませた。そのため、原告は、被告東洋サイエンスに日本触媒の一手販売代理店としての地位を奪われ、同社の一手販売代理店として行っていたCSC社との取引を失い、得べかりし利益として少なくとも金三九万五四二四円の損害を被った。

(一五) 原告は、前記(四)ないし(一四)の損害のほか、被告東洋サイエンス及び被告齋藤ら三名の右各不正競争行為によって、信用毀損による損害、侵害調査費用、弁護士費用として少なくとも金三〇〇万円の営業上の損害を被った。

よって、原告は、被告東洋サイエンス及び被告齋藤ら三名に対し、不正競争防止法二条一項一一号、三条及び七条に基づき、虚偽事実の告知・流布行為の差止め(請求第一項)、信用回復の措置として訂正通知等(請求第二項)及び謝罪広告の掲載(請求第三項)を求めるとともに、同法二条一項四号、五号、一一号、四条に基づき、各自、損害賠償として合計金五二一五万二二七一円及びこれに対する不正競争行為の後である平成八年四月一三日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2  請求原因に対する被告東洋サイエンス及び被告齋藤ら三名の認否

(一) 請求原因(一)(1)、(2)はいずれも否認する。

(二) 請求原因(二)のうち、被告齋藤らが平成七年九月一三日に別紙目録(七)記載の文面の英文案内状を海外の企業にファックス送信したことは認め、その余は否認する。

(三) 請求原因(三)のうち、被告齋藤らが国内メーカーのいくつかを訪問し又は電話をかけたこと、被告齋藤ら三名は、平成七年一〇月四日、被告東洋サイエンスを設立し、被告齋藤及び被告北川は、代表取締役に、被告古川は、取締役に就任したことは認め、その余は否認する。

(四) 請求原因(四)の第一段落のうち、原告が協和化学との間で特約販売店契約を締結し、同社の特約販売店として海外バイヤーと継続的取引を行ってきたことは否認し、その余は認める。

第二段落は否認する。

第三段落のうち、カルベファルマ社がインドネシア最大の製薬会社であることは認めるが、その余は否認する。

(五) 請求原因(五)は否認する。

(六) 請求原因(六)の第一段落のうち、原告が東海カーボンの代理店としてマクムール社と継続的取引を行ってきたことは否認し、その余は認める。

第二段落は否認する。

(七) 請求原因(七)の第一段落のうち、原告が明治製菓ファーマの代理店として海外企業と継続的取引を行ってきたことは否認し、その余は認める。

第二段落は否認する。

(八) 請求原因(八)の第一段落のうち、原告が日本精化の代理店として海外企業と継続的取引を行ってきたことは否認し、その余は認める。

第二段落は否認する。

(九) 請求原因(九)の第一段落のうち、原告が金剛化学及び協和発酵の代理店としてナムシャン社と継続的取引を行ってきたことは否認し、その余は認める。

第二段落は否認する。

(一〇) 請求、原因(一〇)の第一段落のうち、原告が横尾化学及び保土谷化学の代理店としてラッキーレジェキ社と継続的取引を行ってきたことは否認し、その余は認める。

第二段落は否認する。

(一一) 請求原因(二)の第一段落のうち、原告が被告エーザイの代理店として海外企業と継続的取引を行ってきたことは否認し、その余は認める。

第二段落は否認する。

(一二) 請求原因(一二)の第一段落のうち、原告が東ソーの代理店として海外企業と継続的取引を行ってきたことは否認し、その余は認める。

第二段落は否認する。

(一三) 請求原因(一三)の第一段落のうち、原告が日本化薬の代理店として海外企業と継続的取引を行ってきたことは否認し、その余は認める。

第二段落は否認する。

(一四) 請求原因(一四)の第一段落のうち、原告が日本触媒の特約販売店としてCSC社と継続的取引を行ってきたことは否認し、その余は認める。

第二段落は否認する。

(一五) 請求原因(一五)は否認する。

二  被告池村及び同佐々木兼道に対する請求

1  請求原因

(一) 被告池村は、食用牛肉の輸入販売を主たる業務としていたが、平成七年ころ、飼料添加物へ業務拡大を図ろうとしていた。

他方、被告齋藤ら三名は、同じく平成七年ころ、原告と同業新会社を設立し、原告の営業秘密を開示・使用して原告の全取引先を新会社に奪うという計画を有しており、その資金的な支援や銀行、取引先に対する信用面からスポンサーとなる会社を探していたところ、被告佐々木兼道(以下「被告佐々木」という。)から、右計画のスポンサーとなる会社として被告池村を紹介された。

(二) 被告池村及び被告佐々木は、原告の取引内容等を知るため、被告齋藤ら三名に対し、原告の営業秘密の開示を求め、被告齋藤ら三名は、平成七年四月下旬から同年五月上旬にかけて、原告の契約台帳のコピーをとるなどして原告の営業秘密を不正に取得し、これを社外に持ち出して被告池村及び被告佐々木に開示した。

被告池村及び被告佐々木は、被告齋藤ら三名から開示を受けた原告の営業秘密をもとに、被告齋藤ら三名が設立する新会社のスポンサーとなることを約束した。

(三) 被告齋藤ら三名は、同人らが設立する新会社において使用する目的で、前記一1(一)(1)のとおり、平成七年四月下旬から同年九月一〇日までの間に本件営業情報を不正に取得し、前記一1(二)のとおり、本件営業情報を使用して別紙目録(七)記載の文面の文書をファックスで送信し、前記一1(三)ないし(一三)のとおり、本件営業情報を使用して電話又はファックス送信により本件虚偽事実を告知・流布した。

被告池村は、平成七年四月から同年九月二六日ころまでの間、被告齋藤ら三名が右行為を行うのを幇助した。別紙目録(七)記載の文面の文書には、被告齋藤ら三名が設立する新会社は、被告池村がスポンサーとなり、被告池村の営業の一部門として活動を行うことが表示されている。

また、被告池村は、その後も、被告佐々木をして、被告齋藤ら三名の設立する被告東洋サイエンスの発起人とさせ、同社に金四〇〇万円の出資をさせて被告東洋サイエンスの最大の株主とさせたうえ、同社の監査役に就任させるなどして、被告東洋サイエンス及び同齋藤ら三名の前記一1(三)ないし(一四)の不正競争行為を幇助した。

(四) 被告佐々木は、被告池村の意向に従い、被告東洋サイエンスの発起人となり、同社に金四〇〇万円の出資をして最大の株主となり、同社の監査役に就任するなどして、被告東洋サイエンス及び同齋藤ら三名の前記一1(一)(1)、(二)ないし(一四)の不正競争行為を幇助した。

(五) 原告は、前記一1のとおり、被告東洋サイエンス及び同齋藤ら三名の不正競争行為により合計金五二一五万二二七一円の損害を被ったところ、被告池村は、右(二)、(三)のとおり右行為の幇助者として右損害の賠償について共同不法行為責任を負う。

被告佐々木は、右不正競争行為により原告が被った合計金五二一五万二二七一円の損害の賠償について、右(二)、(四)のとおり右行為の幇助者として、共同不法行為責任を負う。

よって、原告は、被告池村及び同佐々木に対し、不正競争防止法二条一項四号、五号、一一号、四条、民法七一九条二項に基づき、各自、損害賠償として合計金五二一五万二二七一円及びこれに対する不正競争行為の後である平成八年四月一三日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2  請求原因に対する被告池村及び同佐々木の認否

(一) 請求原因(一)の第一段落のうち、被告池村が食肉牛肉の輸入販売を主たる業務としていたことは認め、その余は否認する。

第二段落のうち、被告齋藤ら三名が、平成七年ころ、原告と同業新会社を設立し、原告の営業秘密を開示・使用して原告の全取引先を新会社に奪うという計画を有しており、その資金的な支援や銀行、取引先に対する信用面からスポンサーとなる会社を探していたことは不知。その余は、否認する。

(二) 請求原因(二)のうち、被告齋藤ら三名が、平成七年四月下旬から同年五月上旬にかけて、原告の契約台帳のコピーをとるなどして原告の営業秘密を不正に取得したことは、不知。その余は否認する。

(三) 請求原因(三)の第一段落は、不知。

第二段落のうち、別紙目録(七)記載の文面の文書には、被告齋藤ら三名が設立する新会社は、被告池村がスポンサーとなり、被告池村の営業の一部門として活動を行うことが表示されていることは、不知。その余は否認する。

第三段落のうち、被告佐々木が被告東洋サイエンスの発起人となり、金四〇〇万円を出資し、被告東洋サイエンスの株主となったこと、監査役となったことは認めるが、その余は否認する。

(四) 請求原因(四)のうち、被告佐々木が被告東洋サイエンスの発起人となり、金四〇〇万円を出資し、被告東洋サイエンスの株主となり、監査役に就任したことは認めるが、その余は否認する。

(五) 請求原因(五)のうち、原告の被った損害額は不知。その余は争う。

三  被告田谷正明及び同奥野泰雄に対する請求

1  請求原因

(一) 被告田谷正明(以下「被告田谷」という。)は、被告エーザイの従業員であるところ、平成七年九月一一日以降、原告の顧客に対し、原告は営業活動を閉鎖するなどの原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知した。

原告は、被告田谷の右行為により前記一1の損害を被った。

(二) 被告奥野泰雄(以下「被告奥野」という。)は、被告エーザイの従業員であるところ、平成七年九月下旬ころ、被告エーザイの子会社に対し、原告は営業活動を閉鎖するなどの原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、同社をして原告の取引先に対し、右虚偽の事実を流布させた。

原告は、被告奥野の右行為により前記一1の損害を被った。

よって、原告は、被告田谷及び同奥野に対し、不正競争防止法二条一項一一号、四条に基づき、各自、損害賠償として合計金五二一五万二二七一円及びこれに対する不正競争行為の後である平成八年四月一三日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2  請求原因に対する被告田谷及び同奥野の認否

請求原因(一)及び(二)のうち、被告田谷及び同奥野が被告エーザイの従業員であることは認めるが、その余はいずれも否認する。

四  被告エーザイに対する請求

1  請求原因

(一) 原告は、被告エーザイとの間で、平成二年二月八日、次の内容の期限の定めのない一手販売代理店契約を締結し、継続的に取引を行った。

商品 被告エーザイの商品ビタミンE50(ユベラフード500)

買主 エンセバル(ENSEVAL)社

数量 買主の注文(買付量)による

価格 被告エーザイと買主との協議により決定する

決済 信用状決済

口銭 五パーセント

原告は、右買主との右商品の取引について独占的排他権を有する。

原告と被告エーザイは、右契約について、平成四年六月二六日、口銭を四・五パーセントに変更し、更に、平成五年六月七日、口銭を四パーセントに変更する旨合意した。

(二) 原告は、被告エーザイとの間で、平成二年八月一六日、次の内容の期限の定めのない一手販売代理店契約を締結し、継続的に取引を行った。

商品 被告エーザイの商品ビタミンE50(ユベラフード500)

買主 カポ(KAPO)社

数量 買主の注文(買付量)による

価格 被告エーザイと買主との協議により決定する

決済 信用状決済

口銭 五パーセント

原告は、右買主との右商品の取引について独占的排他権を有する。

原告と被告エーザイは、右契約について、平成四年六月二六日、口銭を四・五パーセントに変更し、更に、平成五年六月七日、口銭を四パーセントに変更する旨合意した。

(三) 原告は、被告エーザイとの間で、平成六年五月一七日、次の内容の期限の定めのない一手販売代理店契約を締結し、継続的に取引を行った。

商品 被告エーザイの商品ビタミンE50(ユベラフード500)

買主 ナムシャン(NAM SIANG)社

数量 買主の注文(買付量)による

価格 被告エーザイと買主との協議により決定する

決済 信用状決済

口銭 四パーセント

原告は、右買主との右商品の取引について独占的排他権を有する。

原告と被告エーザイは、右契約について、平成七年二月二〇日、同日契約の同年三月及び四月船積分から口銭を三パーセントに変更する旨合意した。

(四) 原告は、被告エーザイとの間で、平成三年二月二一日、次の内容の期限の定めのない一手販売代理店契約を締結し、継続的に取引を行った。

商品 被告エーザイの商品ビタミンE50(ユベラフード500)を除くビタミンE類

買主 ナムシャン(NAM SIANG)社

数量 買主の注文(買付量)による

価格 被告エーザイと買主との協議により決定する

決済 信用状決済

口銭 六パーセント

原告は、右買主との右商品の取引について独占的排他権を有する。

(五) 原告は、被告エーザイとの間で、平成四年五月六日、次の内容の期限の定めのない一手販売代理店契約を締結し、継続的に取引を行った。

商品 被告エーザイの商品ビタミンE50(ユベラフード500)を除くビタミンE類

買主 ダンコス(DANKOS)社

数量 買主の注文(買付量)による

価格 被告エーザイと買主との協議により決定する

決済 信用状決済

口銭 七パーセント

原告は、右買主との右商品の取引について独占的排他権を有する。

(六) 原告は、被告エーザイとの間で、平成五年二月二日、次の内容の期限の定めのない一手販売代理店契約を締結し、継続的に取引を行った。

商品 被告エーザイの商品ビタミンE50(ユベラフード500)を除くビタミンE類

買主 プラジャ」(PRADJA)社

数量 買主の注文(買付量)による

価格 被告エーザイと買主との協議により決定する

決済 信用状決済

口銭 七パーセント

原告は、右買主との右商品の取引について独占的排他権を有する。

(七) 原告は、被告エーザイとの間で、平成五年二月一八日、次の内容の期限の定めのない一手販売代理店契約を締結し、継続的に取引を行った。

商品 被告エーザイの商品ビタミンE50(ユベラフード500)を除くビタミンE類

買主 サヤップマス(SAYAP MAS)社

数量 買主の注文(買付量)による

価格 被告エーザイと買主との協議により決定する

決済 信用状決済

口銭 七パーセント

原告は、右買主との右商品の取引について独占的排他権を有する。

(八) 原告は、被告エーザイとの間で、平成六年一二月一日、次の内容の期限の定めのない一手販売代理店契約を締結し、継続的に取引を行った。

商品 被告エーザイの商品ビタミンE50(ユベラフード500)を除くビタミンE類

買主 ウィングス(WINGS)社

数量 買主の注文(買付量)による

価格 被告エーザイと買主との協議により決定する

決済 信用状決済

口銭 七パーセント

原告は、右買主との右商品の取引について独占的排他権を有する。

(九) 前記(一)ないし(三)の各契約に基づく継続的取引が別紙一覧表1(買主がエンセバル、カポ、ナムシャンのもの)のとおり行われ、前記(四)ないし(八)の各契約に基づく継続的取引が別紙一覧表2(買主がナムシャン、ダンコス、プラジャ、サヤマップス、ウィングスのもの)のとおり行われた。

(一〇) 被告エーザイは、何ら解約事由がないにもかかわらず、平成七年九月一三日、前記(四)ないし(八)の一手販売代理店契約を、同月一八日、前記(一)ないし(三)の一手販売代理店契約をそれぞれ一方的に解約し、原告との取引を停止した。

被告エーザイの右行為は、前記(一)ないし(八)の契約に違反するものであり、これにより、原告は少なくとも金一二六六万五〇五四円の損害を被った。

よって、原告は、被告エーザイに対し、債務不履行による損害賠償として金一二六六万五〇五四円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成八年四月一三日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2  請求原因に対する被告エーザイの認否

(一) 請求原因(一)ないし(八)は全て否認する。

(二) 請求原因(九)のうち、別紙一覧表1(買主がエンセバル、カポ、ナムシャンのもの)、2(買主がナムシャン、ダンコス、プラジャ、サヤマップス、ウィングスのもの)のとおり取引が行われたことは認め、その余は否認する。

(三) 請求原因(一〇)は否認する。

第三  当裁判所の判断

一  原告の被告東洋サイエンス及び同齋藤ら三名に対する請求について

1  前記第二1の事実のうち争いのない事実に証拠(甲一、六、一三、一七、一八、二二の一、二、甲七三、七四、乙一、二、三の一ないし三、乙一四、一五、一八の一ないし一四、証人池村雄三、原告代表者)と弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。

(一) 原告は、昭和六三年六月四日、原告代表者の森本宏(以下「森本」という。)によって設立された商社であるが、化学工業薬品、農薬、洗顔料、医薬品、医薬部外品及びこれらの諸原料等について、主にインドネシア、タイといった海外のバイヤー(買主)から商品の注文を受け、注文を受けた商品について国内のメーカーと海外のバイヤーとの間の国際売買契約の仲介・締結及び輸出業務を行い、当該メーカーから手数料の支払を受けることを業としている。

原告は、設立当初、代表取締役社長である森本が一人で営業活動を行っていたが、同年九月、池村雄三が原告に出資して代表取締役専務となり、同年一〇月一日、被告北川及び同古川が入社し、平成元年二月一七日、被告齋藤が入社した。被告齋藤が入社した後は、池村雄三が営業の責任者となり、被告齋藤ら三名が現場の営業活動を担当するようになった。そして、原告において、平成四年ころから、被告齋藤は、動物向け医薬品、飼料添加物及び食品添加物等に関する業務を担当し、被告古川は、医薬品及び化粧品原料等に関する業務を担当し、被告北川は、洗顔料等右両被告担当以外の業務を担当していた。

(二)(1) 原告は、昭和六三年一一月二九日、協和化学の製品について、インドネシアのカルベファルマ社との間で売買契約を締結して同社に輸出し、その後、平成八年四月九日まで、右製品についてカルベファルマ社のほか、ウィスモフソド社、キミアファルマ社、ハリムサクティ社、ビンタントゥジュ社との間で売買契約を締結してこれを輸出するという業務を行っていた。

(2) 原告は、平成元年四月二一日、キンセイマテックの製品について、インドネシアのエトセンド社との間で売買契約を締結して同社に輸出し、その後、平成七年七月二六日まで、右製品についてエトセンド社との間で売買契約を締結してこれを輸出するという業務を行っていた。

また、原告は、平成五年九月八日、キンセイマテックの製品について、タイのマス社との間で売買契約を締結して同社に輸出し、その後、平成七年七月七日まで、右製品についてマス社との間で売買契約を締結してこれを輸出するという業務を行っていた。

(3) 原告は、平成二年八月二九日、東海カーボンの製品について、同社とインドネシアのマクムール社との間の売買契約を仲介して締結して、これを同社に輸出し、その後、平成七年七月二一日まで、右製品について、東海カーボンとマクムール社との間の売買契約を仲介して締結し、これを同社に輸出するという業務を行っていた。

(4) 原告は、平成元年八月二九日、明治製菓ファーマの製品について、同社とウィスモ社との間の売買契約を仲介して締結して、これを同社に輸出し、その後、平成七年五月三一日まで、右製品について、明治製菓ファーマとタイ及びインドネシアのバイヤーとの間の売買契約を仲介して締結し、これを右バイヤーに輸出するという業務を行っていた。

(5) 原告は、平成元年六月一五日、日本精化の製品について、同社とインドネシアのバマ社との間の売買契約を仲介して締結して、これを同社に輸出し、その後、平成四年三月一八日までは原告自らが、それ以降平成七年五月二三日までは原告が子会社を通じて、右製品について、日本精化とインドネシアのバイヤーとの間の売買契約を仲介して締結し、これをバイヤーに輸出するという業務を行っていた。

(6) 原告は、平成五年五月一九日及び平成六年六月一七日、協和醗酵の製品について、同社とタイのナムシャン社との間の売買契約を仲介して締結し、これを同社に輸出した。

(7) 原告は、平成六年五月一九日及び平成六年一二月二八日、金剛化学の製品について、同社とタイのナムシャン社との間の売買契約を仲介して締結し、これを同社に輸出した。

(8) 原告は、子会社を通じて、平成四年六月二九日、保土谷化学の製品について、同社とインドネシアのラッキーレジェキ社との間の売買契約を仲介して締結して、これを同社に輸出し、その後、平成七年六月二〇日まで、右製品について、保土谷化学とラッキーレジェキ社との間の売買契約を仲介して締結し、これを輸出するという業務を行っていた。

(9) 原告は、子会社を通じて、平成五年五月一四日、横尾化学の製品について、同社とインドネシアのラッキーレジェキ社との間の売買契約を仲介して締結して、これを同社に輸出し、その後、平成七年五月二九日まで、右製品について、横尾化学とラッキーレジェキ社との間の売買契約を仲介して締結し、これを輸出するという業務を行っていた。

(10) 原告は、被告エーザイの商品ビタミンE50については、別紙一覧表1のとおり、商品ビタミンE50を除くビタミンE類については別紙一覧表2のとおり、同被告と別紙一覧表1、2のバイヤー欄記載のインドネシア及びタイのバイヤーとの間の売買契約を仲介して締結し、右商品を右バイヤーに輸出するという業務を行っていた。

(11) 原告は、平成元年九月八日、東ソーの合成甘味料について、同社とインドネシアのバイヤーとの間の売買契約を仲介して締結し、これを同社に輸出し、その後、平成七年七月二四日まで、右製品について、東ソーとインドネシア及びタイのバイヤーとの間の売買契約を仲介して締結し、これを右バイヤーに輸出するという業務を行っていた。

(12) 原告は、平成三年五月三日、日本化薬の製品について、同社とタイのバイオファーマ社との間の売買契約を仲介して締結し、これを同社に輸出し、その後、平成七年八月七日まで、右製品について、東ソーとバイオファーマ社及びインドネシアのカルベファルマ社との間の売買契約を仲介して締結し、これを右各社に輸出するという業務を行っていた。

(13) 原告は、平成三年一〇月二四日、日本触媒の食品添加物調味料(SS50)について、同社とタイのCSC社との間の売買契約を仲介して締結し、これを同社に輸出し、その後、平成七年七月一〇日まで、右製品について、日本触媒とCSC社との間の売買契約を仲介して締結し、これを輸出するという業務を行っていた。

(三) 原告においては、コンピュータの磁気記憶媒体に別紙目録(四)記載の情報が記録されており、被告齋藤らはこれを業務に使用していた。また、被告齋藤ら三名は、平成七年四月ころ、原告の契約台帳のコピーをとった。

(四) 原告代表者森本は、被告齋藤ら三名に対し、平成六年七月一二日、原告の当期赤字が約一七五〇万円発生し、このままの業績では冬期賞与が払えなくなる旨の通知をした。

(五) 原告は、平成六年一二月一五日、被告齋藤ら三名に対し、冬期賞与として給与月額の一・五か月分を支給した。

被告齋藤ら三名は、平成六年一二月二〇日、労働組合「ストークスを考える会」を結成してその旨を原告に通知し、同月から平成七年三月まで被告齋藤ら三名の右冬期賞与について原告と団体交渉を行い、その後、同年四月から同年七月まで、右冬期賞与、基本給の増額、同年夏期賞与等について原告に要求を出していたが、原告から回答がないので、同月一九日、東京都地方労働委員会に対し、平成六年冬期賞与未妥結分の支給と団交促進についてあっせん申請をした。

東京都地方労働委員会は、平成七年九月一日、右あっせんの手続を打ち切った。

(六) 原告代表者森本は、被告齋藤ら三名に対し、平成七年九月四日、口頭で解雇通知をしたが、その際、解雇の理由として、「このままでは会社が潰れる。金が全然ない。」などと話した。これに対し、被告齋藤ら三名は、原告に対し、右解雇通知を撤回するよう要求する同月六日付けの書面を発送し、同書面は同月七日、原告に到達した。

(七) 被告齋藤ら三名は、平成七年九月一〇日(日曜日)、原告の事務所に立ち入り、解雇通知を受ける旨の書面を原告代表者森本の机上に置き、翌一一日、解雇予告手当を受け取って原告を退職した。

(八) 被告齋藤ら三名は、平成七年九月一三日、原告の海外の顧客に対し、別紙目録(七)記載の文面の文書(英文)をファックス送信した。また、原告と取引のあったフロイント産業株式会社の佐々木俊也は、同日、別紙目録(八)記載の文面の文書(英文)をカルベファルマ社にファックス送信した。

(九) 被告東洋サイエンスは、平成七年一〇月四日、被告齋藤ら三名と被告佐々木により設立され、被告斎藤及び同北川が代表取締役となり、被告古川が取締役となり、被告佐々木が監査役となった。

被告東洋サイエンスは、原告と同種の営業を行っている。

(一〇) 原告の専務取締役であった池村雄三は、平成七年八月ころから森本に対し原告を退社したいと申し出ており、同年一一月二〇日、原告を退社した。

2  以上認定の事実に基づき、まず、被告齋藤ら三名が、原告の営業秘密を窃取したかどうかについて判断する。

(一) 原告は、本件営業情報が不正競争防止法二条四項の営業秘密に当たると主張する(前記第二の一1(一)(2))。

本件営業情報のうち、別紙目録(四)記載の営業情報が原告のコンピュータの磁気記憶装置に記録されていたことは、前記1(三)のとおりであり、証拠(甲三三)と弁論の全趣旨によると、別紙目録(五)、(六)記載の営業情報(別紙目録(六)の19を除く。)は、取引先毎や関連事項毎にファイルに綴じたり、袋に入れられ、そのファイルや袋は担当者の机上に置かれたり、鍵を掛けていないキャビネットに入れられていたこと、別紙目録(六)の19の契約台帳は机上に置かれていたこと、以上の事実が認められる。

原告は、本件営業情報の管理について前記第二の一1(一)(2)のとおり主張するが、原告が本件営業情報を業務以外に使用することを認めていないことから直ちにその情報を秘密として管理していたとは認められず、出入口で第三者の出入りを一般的にチェックしていたことが直ちに秘密の管理に当たるということもできない。また、原告が本件営業情報を特定したうえで、それを外部へ漏洩することを明示的に禁止していたことを認めるに足りる証拠はない。さらに、弁論の全趣旨によると、別紙目録(四)の営業情報については、コンピュータを操作する者が限定されておらず、パスワード等で右営業情報にアクセスすることが制限されているということもなかったものと認められる上、別紙目録(五)、(六)の営業情報に関するファイルや袋についても、机上に置かれたり、鍵を掛けていないキャビネットに入れられており、社内の者が誰でも使用できる状況にあったのであり、証拠(甲二三)と弁論の全趣旨によると、右営業情報にはこれを秘密とするような明示的な表示もなかったものと認められる。

以上述べたところからすると、本件営業情報が不正競争防止法二条四項にいう「秘密として管理されている」情報であるとまでは認められない。

したがって、本件営業情報は、不正競争防止法二条四項の営業秘密には当たらない。

(二) 原告は、被告齋藤ら三名が本件営業情報を窃取したと主張し(前記第二の一1(一)(1))、原告代表者の陳述書(甲三三)にはこれに沿う記載があり、証人池村雄三の証言にもこれに沿う部分がある。また、被告斎藤が平成七年四月ころ原告の契約台帳(別紙目録(六)の19)のコピーを取ったこと、被告齋藤ら三名が平成七年九月一〇日(日曜日)に原告の事務所に立ち入ったことは前記認定のとおりであり、証拠(甲五〇の一、二)と弁論の全趣旨によると、被告北川は、平成七年九月二〇日、原告と取引のあるシャムスなる人物に病院用ベッドの件で手紙をファックス送信した際、原告の同年九月六日付のプライスリスト(英文)を原告の名称等を抹消して手紙とともにファックス送信したことが認められる。

しかし、右の原告代表者の陳述書の記載や証人池村雄三の証言は、いずれも具体性に乏しく、推測の域を出るものではなく、客観的な裏付けを伴うものではない。また、証拠(甲一一の一ないし三)と弁論の全趣旨によると、原告は、被告齋藤ら三名に対し、「貴殿がストークス株式会社を誹謗していること、ストークス株式会社の信用を失墜させる動きをしていること、ストークス株式会社の商権を侵害していること等の連絡が取引先よりある。誠に遺憾であります。今後、この様な事なきよう、言動に注意していただきたい。」と記載した平成七年九月二九日付の文書をそのころ送付したことが認められるところ、右文書を送付したのは被告齋藤ら三名が原告を退職した同月一一日から二週間以上も経過しているのであるから、原告主張のように同被告らが本件営業情報を窃取したのであれば、当然そのことにも言及してしかるべきであるにもかかわらず、右文書には全くその点に関する記載がない。

契約台帳について、原告は、被告齋藤ら三名が原告と同業新会社を設立して不正競業を行うためのスポンサーに開示する目的でコピーをしたものであると主張し(第二の二1(二))、証人池村雄三は、被告齋藤ら三名が辞めた後に契約台帳のコピーが残されていたと証言するが、前記1(五)ないし(七)認定の被告齋藤ら三名が原告を退職した経過に照らすと、被告齋藤ら三名が平成七年四月当時、原告を辞めて新会社を設立する計画を有していたとは到底認められないし、原告主張のような目的で契約台帳のコピーを取ったのであれば、退職後これを原告に残しておくことはいかにも不自然である。

被告齋藤ら三名が平成七年九月一〇日(日曜日)に原告の事務所に立ち入ったからといって、直ちに被告齋藤ら三名が本件営業情報を窃取したものということはできないことは明らかである。

平成七年九月六日付のプライスリスト(英文)は、別紙目録(四)の13の営業情報に当たり、手書きで一部訂正していることから、被告北川が別紙目録(四)の13の営業情報をプリントアウトしたものを流用したものと認められるが、右流用の事実から直ちに原告の主張するように本件営業情報を窃取したとまでは認められない。また、仮に、被告北川が別紙目録(四)の13の営業情報である右プライスリストを窃取した事実があったとしても、別紙目録(四)「の営業情報が不正競争防止法二条四項の営業秘密に当たらないことは前示のとおりであるし、被告北川が右プライスリストを右の態様で使用したことにより原告に何らかの損害が生じたかどうかについては全く主張立証がない。

以上のとおり、原告代表者の陳述書の記載及び証人池村雄三の証言、被告齋藤が契約台帳のコピーを取ったこと、被告齋藤ら三名が原告の事務所に立ち入ったこと、プライスリストを流用したことから、被告齋藤らが本件営業情報を窃取したとまでは認められず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

(三) よって、不正競争防止法二条一項四号、五号に基づく請求は理由がない。

3  次に、被告齋藤ら三名が原告の取引先に本件虚偽事実を告知・流布したかどうかについて判断する。

(一) 原告が、協和化学の製品について同社及びカルベファルマ社等と、キンセイマテックの製品について同社及びエトセンド社と、東海カーボンの製品について同社及びマクルーム社と、明治製菓ファーマの製品について同社及びウィスモ社等と、日本精化の製品について同社及びバマ社等と、協和醗酵及び金剛化学の製品について同社及びナムシャン社と、保土谷化学及び横尾化学の製品について同社及びラッキーレジェキ社と、被告エーザイ及び東ソーの製品について同被告ら及びインドネシア、タイのバイヤーと、日本化薬の製品について同社及びバイオファーム社等と、それぞれ取引を行っていたことは、前記1(二)(1)ないし(12)認定のとおりである(以下、右各取引に係る製品の国内メーカーを「協和化学等」といい、右各取引を「本件取引」という。)。

原告は、本件取引について、独占的な販売権(一手販売権)を有する販売店又は代理店であったが、被告齋藤ら三名が本件虚偽事実を取引先に告知したことによりその地位を被告東洋サイエンスに奪われ、右取引を失い、損害を被ったと主張し(前記第二の一1(三)ないし(一三))、池村雄三の陳述書(甲三四、七三)及び原告代表者の陳述書(甲三五)にはこれに沿う記載があり、証人池村雄三の証言及び原告代表者の代表者尋問における供述にはこれに沿う部分がある。また、被告齋藤ら三名が原告を退職した後の平成七年九月一三日、原告の海外の顧客に対し、別紙目録(七)記載の文面の文書(英文)をファックス送信したこと、フロイント産業株式会社の佐々木俊也が同日別紙目録(八)記載の文面の文書(英文)をカルベファルマ社にファックス送信したことは、前記1(八)認定のとおりである。

(二)(1) 別紙目録(七)記載の文面の文書(英文)には、被告齋藤ら三名が原告を退職したこと、池村雄三が平成七年八月以来退職を申し出ていること、原告は五人だけで運営されており、池村雄三が退職すれば、社長の森本のみが原告に残ることになることが記載されているが、これらの事実は前記1認定の事実に照らすと真実であると認められる。そして、他に、右文書について原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知・流布するものであるというべき事実は認められない("After deep consid eration and discussion with our suppliers"の部分及び"the same product lines"の部分の訳文に関して当事者間に争いがあるが、いずれにしても、右結論に影響を与えるものではない。)。

(2) 別紙目録(八)記載の文面の文書(英文)には、"We received the information from Mr. Kitagawa of STORKS LTD. that his company is going to close the business."(ストークスの北川氏より彼の会社が近々店じまいをするということを聞きました。)との記載があること、証拠(甲四八)と弁論の全趣旨によると、被告北川は、平成七年九月八日、フロイント産業に赴いたことが認められる。しかし、原告代表者の森本は、平成七年九月四日、被告齋藤ら三名に対し解雇通知をした際、「このままでは会社が潰れる。金が全然ない。」などと解雇理由を説明したこと、原告は森本、池村雄三及び被告齋藤ら三名で営業活動が行われており、現場の営業活動は被告齋藤ら三名が行っていたこと、池村雄三は、同年八月ころより原告から退社することを希望していたことは前記1認定のとおりである。そして、これらの事実に右(1)認定の事実を総合すると、被告古川は、フロイント産業の佐々木俊也に対し、社長の森本から解雇理由について右のように聞かされたこと、池村雄三が退職を希望しており、そうなれば原告は従来五人で営業活動を行っていたが、今後は森本一人で行うことになることなどを告げ、それを聞いた佐々木俊也が、右文書において右のように表現した可能性を否定することができないから、右記載があることから被告北川が佐々木俊也に対し本件虚偽事実を告知したとまでは認められない。また、被告齋藤ら三名が佐々木俊也をして右文書を送付させたことについては、池村雄三の陳述書(甲三四、七三)及び原告代表者の陳述書(甲三五)にこれに沿う記載があるが、それらの記載は推測に過ぎないから、それらの記載から右事実を認めることはできず、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。

証拠(甲二七の一ないし一七)によると、前記1(二)(1)認定の協和化学の製品についての原告と協和化学及びカルベファルマ社との取引は佐々木俊也が別紙目録(八)記載の文面の文書をカルベファルマ社にファックス送信した平成七年九月一三日以後も、平成八年四月まで行われたことが認められるから、別紙目録(八)記載の文面の文書がファックス送信されたことにより原告が協和化学及びカルベファルマ社との取引を失ったとは認められない。また、以上判示したところに加え、証拠(甲二八の一ないし六、乙五)と弁論の全趣旨によると、原告が協和化学の製品について取引を行っていた他の会社、すなわちウィスモフソド社、キミアファルマ社、ビンタントゥジュ社等との取引についても、平成七年九月以降も継続して取引が行われていたことが認められることを総合すると、別紙目録(八)記載の文面の文書がファックス送信されたことにより原告がこれらの会社との取引を失ったとも認められない。

(三) 池村雄三の陳述書(甲三四、七三)及び原告代表者の陳述書(甲三五)には、被告齋藤ら三名が退職した前後ころより国内及び海外の取引先から支払条件の変更を求められ、又は船積みを早めるように求められるなど原告の取引先が原告の信用状態に対する不安を示すような対応をするようになったが、それは被告齋藤ら三名が右取引先に本件虚偽事実を告知・流布したからである旨の記載があり、証人池村雄三の証言及び原告代表者の代表者尋問における供述にも同旨の部分がある。しかし、別紙目録(七)記載の文面の文書(英文)を受信し、被告齋藤ら三名から、原告代表者は「原告はこのままでは潰れる。金が全然ない。」などと解雇理由を告げたこと、原告は池村雄三が辞めれば森本一人が残ることになることなどを説明されれば、取引先の中には原告の信用状態について不安を抱く者があったとしてももっともであるということができ、原告の取引先の中に原告主張のような対応をする者があったとしても、そのことから直ちに被告齋藤ら三名が原告の取引先に本件虚偽事実を告知・流布したとまで認めることはできない。

(四) その他の原告の前記(一)の主張に沿った池村雄三及び原告代表者の各陳述書の記載並びに証人池村雄三の証言及び原告代表者の代表者尋問における供述は、いずれも伝聞ないし単なる推測を述べるに過ぎないと言わざるを得ないから、それらから、被告齋藤ら三名が本件虚偽事実を告知・流布したことを認めることはできない。そして、他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。

(五) 原告が、日本触媒の製品について同社及びCSC社と、それぞれ取引を行っていたことは、前記1(二)(13)認定のとおりであるところ、原告は、被告齋藤は、平成七年一二月ころ、CSC社のMS. MONTITAに電話をかけ、日本触媒のSS50は、被告東洋サイエンスが輸出することになったので、今後は被告東洋サイエンスに引き合いをするように言ったと主張する(前記第二の一1(一四))。被告齋藤がCSC社のMS. MONTITAに右のとおり述べたとしても、それは、日本触媒のSS50を被告東洋サイエンスが扱うようになったことを述べたに過ぎず、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知・流布したということはできない。

(六) よって、不正競争防止法二条一項一一号に基づく請求は理由がない。

4  以上のとおり、被告東洋サイエンス及び同齋藤ら三名に対する請求は理由がない。

二  被告池村及び同佐々木に対する請求について

原告は、被告東洋サイエンス及び同齋藤ら三名が前記第二の一1の不正競争行為を行ったことを前提として、被告池村及び同佐々木が被告東洋サイエンス及び同齋藤ら三名が右不正競争行為を行うのを幇助したから、共同不法行為責任を負うと主張するが、右一で認定判断したとおり、被告東洋サイエンス及び同齋藤ら三名は、右不正競争行為を行ったとは認められないから、原告の主張はその前提を欠き、理由がない。

したがって、被告池村及び同佐々木に対する請求は、いずれも理由がない。

三  被告田谷及び同奥野に対する請求について

被告田谷及び同奥野が被告エーザイの従業員であることは当事者間に争いがない。

池村雄三の陳述書(甲三四、七三)及び原告代表者の陳述書(甲三五)には、被告奥野の担当商品の乙仲である東海協和株式会社から、「エーザイからストークスは店を閉めると聞いた。」旨の記載があり、原告代表者は、代表者尋問において被告田谷及び同奥野が乙仲に対して原告が店を閉めると言ったと供述し、証人池村雄三も同旨の証言をするが、これらは伝聞ないし推測によるものであって、これらを裏付ける客観的な証拠もないから、これらによって直ちに被告田谷及び同奥野が乙仲に対して原告が店を閉めると言ったと認めることはできず、他に被告田谷及び同奥野が原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したことを認めるに足りる証拠はない。

したがって、被告田谷及び同奥野に対する請求はいずれも理由がない。

四  被告エーザイに対する請求について

1  原告が、別紙一覧表1、2のとおり、被告エーザイ並びにインドネシア及びタイのバイヤーと取引を行ったことは、前記一1(二)(10)認定のとおりである。

原告は、右取引が原告と被告エーザイとの間の期限の定めのない一手販売代理店契約に基づくものであり、被告エーザイは何ら解約事由がないにもかかわらず、右一手販売代理店契約を一方的に解約することはできない旨主張する。

2  原告代表者及び証人池村雄三は、代表者尋問及び証人尋問において、原告の右主張に沿った供述及び証言をし、池村雄三の陳述書(甲七三)には同旨の記載があるところ、それによると、原告と被告エーザイとの間のビタミンE50についての一手販売代理店契約は、平成元年四月ころ、同被告の欧米営業部営業一室のビタミンE50の輸出担当者であった谷口と池村雄三との間で締結され、ビタミンE50を除くビタミンE類についての一手販売代理店契約は、平成二年ころ、同被告の食品・化学事業部(当時)の担当者である被告奥野と池村雄三との間で締結されたというのであるが、いずれも契約書は作成せず、口頭の契約であり、契約時に決められたのは扱う商品と地域だけで、それ以外の契約期間、契約の解約条件、年間最低取引量、競合品の取扱い等の契約条項については全く取決めがされなかったというのである。

原告の主張に係る右一手販売代理店契約は、原告が買主との間における被告エーザイの特定商品の取引について独占的排他権を有し、被告エーザイは、右契約を一方的に解約することができないというものであるから、このような拘束力の強い契約が、契約書が作成されることなく、契約期間、契約の解約条件、年間最低取引量、競合品の取扱い等の契約条項が定められることなく締結されるとは通常考えられない(なお、証人池村雄三は、化学品の国際取引においては、契約書が作成されることなく、右の各条項を定めることなく、原告の主張に係る一手販売代理店契約が締結されるのが普通である旨証言するが、それを裏付ける客観的な証拠はなく、信用することはできない。)。また、証拠(甲三)によると、原告と被告エーザイは、平成五年七月一日から平成六年三月三一日までを有効期間とする業務契約を締結していること、右契約においては契約書が作成され、契約条項を具体的に定めているが、対象とされた製品について原告に一手販売権を認める旨の条項はないこと、以上の事実が認められる。これらの事実に照らすと、原告代表者の右供述及び証人池村雄三の右証言並びに右陳述書の記載から直ちに原告が被告エーザイとの間でビタミンE50及びそれを除いたビタミンE類について、原告主張に係る一手販売代理店契約を締結したと認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

その他、原告が被告エーザイとの間で、ビタミンE50及びそれを除いたビタミンE類について、一方的に解約することができない継続的な契約を締結したことを認めるに足りる証拠はない。

3  以上によると、被告エーザイに対する請求は理由がない。

五  結論

以上の次第で、原告の本訴請求はいずれも理由がない。

(裁判長裁判官 森義之 裁判官 榎戸道也 裁判官 杜下弘記)

別紙目録(一)

当社は、左記のとおりストークス株式会社に対して謝罪したことをご報告いたしますと同時に、貴社及びストークス株式会社に対し多大の迷惑をおかけしましたことを深く陳謝いたします。

当社及び齋藤秀夫、北川智士、古川喜一は、貴社の取引先の多数に対し、貴社が営業活動を閉鎖する等の書面を送付し、右内容の陳述をしました。これは全くの虚偽であり、貴社の営業上の信用を害し、貴社と貴社の取引先各位に多大の迷惑をおかけしましたことを深く陳謝いたします。

東京都中央区八丁堀二丁目二九番五号

東洋サイエンス株式会社

代表取締役 齋藤秀夫

齋藤秀夫

北川智士

古川喜一

別紙目録(二)

DEAR SIRS;

AS KNOWN TO YOU,THREE OF US,LEFT STORKS LTD. ON 11TH SEPT.,'95 AND IMMEDIATELY ESTABLISHED TOYO SCIENCE CORP. TO DEAL IN THE SAME PRODUCT LINES WITH STORKS.

WE TOLD MANY CUSTOMERS AND SUPPLIERS OF STORKS THE MADE-UP STORIES AND SLANDERS SUCH AS;

1 STORKS IS GOING TO CLOSE THE BUISINESS.

2 STORKS DOES NOT FUNCTION NOW.

3 TOYO SCIENCE ARE IN CHARGE OF THIS BUSINESS INSTEAD OF STORKS.

4 STORKS IS IN SEVERE FINANCE SITUATION,SUCH AS CREDITS FROM BANK IS SHORTENED.

FOR TAKING THE BUSINESS OF STORKS AWAY FROM THEM.

WE ADMIT THAT ALL ABOVE ARE NOT TRUE AND FABRICATED INTENTIONALLY BY US.

WE HEREBY APOLOGIZE CAUSING TOUBLES TO STORKS,THEIR CUSTOMERS AND SUPPLIERS BY TELLING THE UNTRUE STORIES AND SLANDERS IN THE MARKET THAT DAMAGED TO THE SOCIAL CREDITABILITY OF STORKS AND THEIR BUSINESS.

WE PLEDGE THAT WE WILL NEVER TRANSACT THOSE PRODUCTS HANDLED BY STORKS WHEN WE WORKED FOR THEM WITH THEIR CUSTOMERS AND SUPPLIERS THIS AFTER.

WE HOPE THAT YOU GIVE STORKS THE RECOVERY OF SOCIAL CREDITABILITY AND YOUR PATRONAGE AS EVER.

YOURS TRULY,

TOYO SCIENCE CORP.

NIKKO PALACE YAESU 201

29-5,HATCHOBORI 2-CHOME,CHUO-KU,

TOKYO 104 JAPAN

PRESIDENT HIDEO SAITO

S.KITAGAWA H.SAITO K.HURUKAWA

古川喜一

東京都中央区八丁堀四丁目二番七号

ストークス株式会社

代表取締役 森本宏殿

別紙目録(三)

当社及び齋藤秀夫、北川智士、古川喜一は、貴社の取引先の多数に対し、貴社が営業活動を閉鎖する旨の書面を送付し右内容の陳述をしました。これは全くの虚偽であり、貴社の営業上の信用を害し、貴社と貴社の取引先各位に多大の迷惑をおかけしましたことを深く陳謝いたします。

東京都中央区八丁堀二丁目二九番五号

東洋サイエンス株式会社

代表取締役 齋藤秀夫

齋藤秀夫

北川智士

別紙目録(四)

1 原告の海外顧客宛の手紙

2 原告の海外顧客宛のFAX送信文

3 MAKER LIST

原告の全仕入先の社名、住所、電話、FAX、部課名、担当者名が記載されたリスト

4 BUYER’S LIST

原告の全海外顧客の社名、住所、電話、FAX、が記載されたリスト

5 原告が前記4のBUYER’S LISTをもとに代表者、担当者等人名を記載したリスト

6 月報(フロッピー・ディスク)

当月中の新規契約(成約)、当月中の船積完了(受渡)、当月中の船積未完了(契約残)の明細表

7 年度別契約明細表(フロッピー・ディスク)

商品別に各月毎に誰と何をどの位の量をいくらの値段で契約したかの明細表

8 原告の取引に係るインボイス

9 原告の取引に係るパッキング・リスト

10原告の取引に係るコントラクト・ノート

11原告の取引に係る註文書

12原告の取引に係る注文請書

13原告の取引に係るプライス・リスト

14原告の取引に係る商品リスト

原告が取扱商品にコード・ナンバーをつけて作成したもの

15英文カタログ・商品説明書

メーカーのカタログ、資料、話をもとに原告が独自に作成した商品情報、商品説明書

16PRODUCT LIST

海外顧客に原告の取扱商品を知らせる原告の分野別取扱商品リスト

別紙目録(五)

1 三井東圧化学(株)の飼料添加物トリブトファンをタイで輸入登録するのに必要な輸入登録用書類(控)(分析表、分析方法説明書、成分証明書、使用量説明書等)(英文)

2 明治製菓ファーマインターナショナル(株)のコリスチンの資料(他社商品との比較説明書等)(英文)

3 東京田辺製薬(株)の医薬品ウルソをタイで輸入登録するのに必要な輸入登録用書類(控)(英文)

4 綜研化学(株)の化粧品用PMMAに係る全てのカタログ、資料(英文)

5 キンセイマテック(株)の化粧品用原料(タルク、マイカ、セリサイト)に係る全ての資料(処方例等)(英文)

6 協和化学工業(株)との取引に係る資料(現地顧客別各社売上状況、各社新規関連商品、他社との競合状況、価格設定打合せメモ等の諸資料)のファイルのうち94年度分及び95年度分のファイル

7 出光マテリアル(株)のカタログ・商品説明書、関連資料の全て(英文)

8 月報、年度別契約明細表、バイヤーへの商品関連情報等、メーカーへの契約残の消化状況、商談中の報告書、市場報告書等、関係先への連絡等の手紙、ファックス、原告作成の英文カタログ・商品説明書等が入力されたフロッビー・ディスク

別紙目録(六)

1 明治製菓ファーマインターナショナル(株)から95.8.14入手したVACCINDOからの同社宛コリスチンに関するFAX及び95.9.4発信FAX

2 キンセイマテック(株)の95.9.4送受信FAX

3 日本精化(株)の技術資料(TECHNICAL DATA)及び95.7.11受信FAX

4 三井東圧化学(株)のトリブトファンの輸入登録関係の資料のタイCP宛95.7.13及び14発信FAX

5 フロイント(株)と商談中のハイコーター及びフロードライヤーの資料、見積書、受発信FAX

6 フランスベッド(株)及びバラマウントベッド(株)の病院用ベッドのカタログ、商品説明書、輸出価格計算書、見積書、価格表等

7 サンユー商会(株)の染色助剤のカタログ、商品説明書、見積書等

8 旭化成(株)のコリスチンのカタログ

9 平成7年9月1日から同月8日までの間の日清サイエンス、リボテック、オリオックス、ラスコからの入電FAX、ナムシャン宛FAX等

10東ソー(株)の難燃剤のカタログ

11(株)南陽の化粧品用機械の図面

12電気化学工業(株)のシリカビーズのカタログ(PRODUCT CATALOG)

13クニミネ工業(株)の商品情報(PRODUCT INFORMATION)

14(株)三和化学研究所のB型肝炎用経口薬の文献(ENGLISH LITERATURERS)

15吉富製薬(株)の紫外線吸収剤と酸化防止剤の比較資料

16清水化学(株)のグルコマンナンのカタログ

17日本製紙(株)のセルローズ粉末のバンフレット(BROCHURE)

18損益計算書(月別のもの含む)・貸借対照表(月別のもの含む)等経理関係書類

19契約台帳

20契約実積明細表(月報)

21輸出船積関係書類

22メーカーの商品規格書、カタログ、商品説明書及び商品関連情報(現地政府への登録用資料を含む)

23輸出価格計算書

24受発信ファックス

25受発信手紙

26見積書

27ブライス・リスト

別紙目録(七)

:PT GUNUNG PADU PRIMAKASA SEPT.13’95

:MR.HIDAJAT SUMALI

MR.SJAMSU SUMALI

ANNOUNCEMENT

We are very sorry to inform you that all staff in STORKS LTD. Kitagawa, Saito and Furukawa. have resingned the company. In addition, Mr. Ikemura have been applying to Mr. Morimoto, president. to resgin the company since last August, however, he need more time to complete the procedure of his resignation because he is a director and shareholder for the present.

As you know, Storks was operated only 6 persons. so. after Mr. Ikemura resigns. only the president remains in the company. During We were in STORKS, I could have great support from you and your staffs and thank you very much.

After deep consideration and discussion with our suppliers. Kitagawa, Saito. and Furukawa wish to establish a new company to deal in the same product lines. However, to establish the company, there are many procedures, so until the company established, we borrow the business activity from the following company.

Company name:MEDIA INTERNATIONAL CORP.

Tel:81-3-3551-8330

Fax:81-3-3551-8488

Because of unexpected happenings. We are very sorry to make trouble you.

But we would appreciate very much if you could spport us as same as before and give us inquiries for the same products line when you need.

Yours truly

<省略>

<省略>

<省略>

別紙目録(七)の訳文

グヌング パドゥ プリマカサ(株) 95.9.13

ヒダヤット スマリ 様

シャムス スマリ 様

案内状

ストークスの全スタッフ、即ち北川、斎藤、及び古川がストークスを退職しましたことを残念ながらお知らせします。その上、池村氏は社長の森本氏に対し、8月以来退職を申し出ています。しかしながら、彼は現在会社の役員であり、かつ株主でもあるため退職手続完了に時間がまだかかります。

ご承知通り、ストークスは5人だけで運営されておりました。池村氏が退職すれば、社長一人のみが、会社に残ることになります。我々がストークスに在籍していた時には貴殿及びそのスタッフの方々から大いなるご協力を得ることが出来ましたことを感謝します。

我々の仕入先の方々と十分なる熟慮検討の結果、北川、斎藤、及び古川は同一商品の商売を行う会社を設立すべく考えております。しかしながら会社を設立するにはたくさんの手続を要します。そのため、会社設立完了までは、次の会社にて営業を行わせてもらいます(we borrow the businness activity from the following company)。

会社名 メディアインターナショナル(株)

電話 81-3-3551-8330

FAX 81-3-3551-8488

予期せぬ出来事により、貴殿に迷惑をかけて申し訳ありません。しかし以前と同じように我々を支持していただき同一商品の引合いをいただければ大変有難く存じます。

敬具

(署名) S.北川 H.斎藤 K.古川

別紙目録(八)

FACSIMILE

Fax Ref.No. 5975

Fax To: P.T.KALBE FARMA

Attn: Mr.Dloko Suiono,Production Director

Re: "FREUND" FLOW-DRYER Model:NFOD-200EX

FREUND INDUSTRIAL CO.,LTD.

14-2 Takadanobaba 2-Chome.

Shinjuku-Ku,TOKYO,Japan

Fax No.:(81)3-3232-0359/0372

Tel No.:(81)3-3232-9351

(81)3-5272-8166

Date: Sept,12,1995

Dear Mr.Sujono:

We received the information from Mr.Kitagawa of STORKS LTD.that his company is going to close the business.

We understand that you are going to decide new fluid bed dryer soon.

Please kindly confirm up to date situation for above project.

We would like to re-quote our quotation and if you have any comment,please let us know.

We will try to submit our best price,and if you need to discuss more detail,I am come to your factory.

We are looking forward to your prompt reply.

Best regards,

Toshi Sasaki,Foreign Div.,

別紙目録(八)の訳文

ファクシミリ

参照番号 5975 フロイント産業(株)

カルベファルマ(株) 本店所在地 電話 FAX

ジョコ スジョノ様 生産担当重役 日付1995.9.12

件名 "FREUND" FLOW-DRYER 型式 NFOD-200EX

拝啓 スジョノ様

ストークスの北川氏より彼の会社が近々店じまいをする(close the business)ということを聞きました。

貴社が新しい『fluid bed dryer』の決定を近々されると理解しております。

上記プロジェクトの現時点の状況をご確認ください。

我々としては再度見積の見直しをする所存であり、もしそれに対して何かご意見があればご連絡ください。

我々はベスト・プライスを提示する所存であり、もしそれについて詳細な打合せが必要なら、貴社にお伺いします。

貴社の迅速なご返事をお待ちします。

敬具

佐々木俊 海外事業部

別紙一覧表1

<省略>

<省略>

別紙一覧表2

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
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